宇治人形

先日、花園大学、歴史博物館で行われている宇治人形の展覧会へ行ってきました。近年では生産量も少なくて、地元の人にもあまり知られていないですが、宇治のおみやげ品のひとつだったらしい。宇治人形なんていうものは私も初めて知りました。
ので、その重要性もあまり認識されておらず、約180点まとまって一堂に会するこの展覧会は大変貴重な機会だと思います。今回の展示は、同大学の非常勤講師、人形の寺・宝鏡寺学芸員田中正流氏所蔵の宇治人形を中心としたものです(中心というかほとんどだと思うが)。すばらしい。一堂といっても一部屋におさまっちゃうくらいですけど。
宇治人形っていうのは、古くなったお茶の木で作られた、根付ほどの小さい木彫りの人形です。彩色されていて、茶摘姿の女性のかたちをしています。茶の木は硬いそうで、角ばった印象です。
江戸時代後期に御袋茶師上林清泉が始めたといわれています。お父さんが絵師だったみたい。上林清泉はお茶やさんを継ぎ、そのお茶やのお得意さんに配るためにこの人形を作り始めたらしいです。その後、子どもの3代で途絶えてしまいますが、その技を受け継ごうとする人が何人もおり、戦前までは、代表的な作者も現れています。一転、第二次世界大戦で制作が中断されてしまい、戦後、製作はされていましたが、戦前ほどの活気はなくなってしまいました。
粗品がお土産品になり、民芸品になり、という流れがはっきりみえて面白いです。そんなに大量に作られていたわけでもなく、つくり手も広範囲でなかったので、かたちによって系統が分かれているとかはないけど、顔の表情が作る人によって違っていて、どれも愛着がわくものでした。
今は、後継者がおらず、作り手さんが1人いるだけで、その人も高齢でもう作っていないそう。平等院近くのお土産やさんで、売れ残っていた宇治人形がまだ数体ひっそり眠っているらしく、それが売れたらもうおしまいだそう。
なんとも魅力的な展覧会。行ってよかったです。
◇「宇治人形―知られざる茶の木人形の世界―」花園大学歴史博物館/2007年10月22日〜 12月15日/無料